◆ 劇団アドック創立十五年記念公演 芥川龍之介作「雛」 <ストーリー>
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<ストーリー>


  このお芝居は、「年寄りの話でございますので
  退屈なさらないかと・・・」で始まる。
  老女鶴の、少女時代を語り聞かせる物語である。

  十二代に亘りお金御用をつとめてきた
  紀伊国屋ですが、江戸から明治へ時代が移る中
  江戸幕府の瓦解によって、諸大名に貸した金が
  戻らず、その日暮らしにも事欠く有様でした。

  そして十一月を迎え、この年の瀬を凌ぐために  
  とうとう娘の雛人形まで売らなければなりませ
  んでした。

  娘のお鶴も家の窮状を思えば雛人形を売られる
  のは仕方がないと諦めました。
  しかし、売られてゆく前にもう一度、雛たちの
  顔を見ておきたい。

  ・・・それが、お鶴の願いでした。
 

 しかしその願いは果たされる事無く日は
 過ぎて、とうとう売り渡す前日になりま
 した。

 お鶴は一日中お雛様の事ばかり考えてい
 ました。

 「・・・明日になれば雛人形とは二度と
 会えなくなる」
 「いっそのこと火事になって、家も雛も
 みんな燃えてしまえばいい」

 そのような思いを巡らしておりましたが
 いつの間にか眠りに落ちていたのでした。
 
 真夜中、何かの気配に目を覚ましました。

 「泥棒か?」・・・
 ところがそこには我が目を疑う光景が!